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東京地方裁判所 平成4年(ワ)13929号 判決

主文

1  原告らの被告らに対する請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

理由

一  請求原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

そして、《証拠略》によれば、被告信州塩嶺高原カントリー株式会社の運営する信州塩嶺高原カントリークラブはいわゆる預託金制のゴルフクラブであつて、その規則によれば、もともと信州塩嶺高原カントリークラブの会員は、正会員であると特別会員であるとを問わず、死亡によつてその資格を失うものとされ、正会員の死亡によつて預託金返還請求権を相続した相続人については、当該相続人が信州塩嶺高原カントリークラブの理事会の承認を得て新たに被告信州塩嶺高原カントリー株式会社との間で入会契約を締結して、いわゆる名義書き換えを受けることができるにとどまること、被告信州塩嶺高原開発株式会社は、昭和五〇年頃、塩嶺高原別荘地を分譲するに際し、その販売促進策として、被告信州塩嶺高原カントリー株式会社との間で合意をして、別荘地の購入者のうち入会を希望する者については、当該購入者の一代に限つて、入会金を預託することなくして、信州塩嶺高原カントリークラブの正会員並みの資格でゴルフ場を利用することができる別荘特別会員として取り扱うことにしたこと、もつとも、被告らが作成し頒布した前記のパンフレット等には、右別荘特別会員の資格が当該別荘地購入者一代限りのものであることが明示されてはいなかつたが、被告信州塩嶺高原カントリー株式会社は、別荘地の購入者のうちの入会希望者に対しては、別荘特別会員の会員証を送付するに際して、別荘特別会員は、記名人の終身に限つて正会員と同等の資格でプレーすることができるに過ぎないものであつて、他人に譲渡することはできず、相続の対象となるものでもないこと、記名人が死亡した場合には別荘特別会員の会員証を返納すべきことを書面によつて通知することにしていたこと、訴外八杉晴実は、塩嶺高原別荘地のうちの前記一区画を買い受けるとともに、被告信州塩嶺高原カントリー株式会社に対して、別荘特別会員としての入会の申込をして信州塩嶺高原カントリークラブに入会したが、被告信州塩嶺高原カントリー株式会社は、昭和五〇年一二月一〇日頃、訴外八杉晴実に対して、別荘特別会員の会員証を送付するとともに、別荘特別会員が記名人の終身に限つて正会員と同等の資格でプレーすることができるに過ぎないものであつて、他人に譲渡することはできず、相続の対象となるものでもないことを書面によつて通知したことの各事実を認めることができる。

二  以上によれば、いずれにしても原告ら又は原告八杉淳一が本件会員権を相続によつて承継したものと解する余地はないのであつて、原告らの被告らに対する本訴請求は理由がない。

したがつて、原告らの被告らに対する本訴請求は棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法八九条及び九三条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 村上敬一)

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